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すごい戦い

「そういうわけで、俺達はお前を許すわけにはいかないんだ。師匠の無念を晴らすのも、弟子の役目だからな」


「いやぁ。まずは愛想をつかすのが先だと思うぞ」


 志が立派なのはいいんだけどさ。師匠はちゃんと見極めて選ばないと。


「まぁ話はわかった。仇討ちって言ってもどうするんだ? 人数を集めて一斉に襲いかかってくる感じか? 別にそれでも構わないけど」


「大した自信だ。チェチェン老を倒したことで、増長しているのか?」


「最初からこんなんだよ」


「そうか。だが俺達にも冒険者としての誇りがある。多勢に無勢という卑怯な真似はしたくない」


 サニーは背中の大剣を抜く。

 幅広い片刃の刀身が、朝の陽光を浴びて黒く輝いた。


「この中じゃ俺が一番強い。代表としてやらせてもらう」


「タイマンってわけか。上等だ」


 なんというか、騎士道精神的なサムシングを感じる。

 恨みだけじゃなく、ちゃんと相手に敬意をもって接してくるところは、素直に称賛したいところだ。

 こちらもその礼に応じないといけないだろう。

 いや、待てよ。


「ちょっと待った」


「なんだ」


「いやさ。俺はギルド長から依頼された仕事に行く最中なんだよ。だから、邪魔されると都合が悪いっていうか、申し訳ないっていうか」


「申し訳ないだと?」


「だって、お前らが俺を邪魔しちまうと、なんとなくペナルティみたいなのがありそうだろ? ギルド長の依頼を妨げたってことで」


 俺の言葉に、サニーは鼻を鳴らす。


「要らない心配だ。気を遣ってくれなくていい」


「そうかい」


 本人がそう言うなら遠慮はいらないか。

 俺は更に一歩前に出る。


「長引かせると近所迷惑になる。こいよサニー」


「武器を持たなくていいのか?」


「俺の武器はここにある」


 そう言って自分の胸をとんとんと叩く俺。かっこよすぎだろ。


「ならいい。行くぞ。ロートス・アルバレス……!」


 サニーは真正面から突っ込んでくる。

 大剣を振りかぶっての斬り下ろし。大味な攻撃だが、動きに無駄がなく洗練されているせいか、隙はまったくない。

 そして速い。

 踏み込みの速度は想像を絶する領域だった。


「あぶないっ!」


 と言いながら、俺は身をかわす。

 紙一重で回避するも、追撃の手は緩まない。


「うわっ! あぶなっ!」


 怒涛の連撃を繰り出してくるサニーに対して、俺は回避に集中するしかなかった。

 剣筋はなんとか見えるが、反撃する隙は無い。


「ちょ、やめろって!」


 何十回目かに迫る剣を手で受け流す。

 それに驚いたサニーは、さっと身を引いて距離を取った。


 ふう。あぶなかったぜ。


 サニーは青い両目でじっと俺を見据える。

 騒がしいのは観戦する冒険者達だ。


「なんだあの戦いは……! ハイレベルすぎる……!」


「ああ。目で追うのがやっとだ」


「サニーさんの剣技もパネェけど、あのガキの動きも異次元だぞ」


「すごい……!」


「マジで半端ない戦いよ!」


「なに言ってやがる。サニーさんにとっちゃあんなの準備運動だ」


「その通りです。本番は、ここからですよ」


 なんか意味深な言葉が聞こえてくる。

 その間に、サニーが剣を構え直していた。


「いい反応だ。ロートス・アルバレス。流石はわが師チェチェンを下しただけのことはある」


「ありがとう」


「ここからは俺も本気だ。はあっ!」


 気合と共に爆音が響く。そして、サニーの全身から金色の光が放たれた。


 なんだあれは。

 スキル? いや、魔法か?


 だが〈妙なる祈り〉を発動してもオーラは消えない。

 そもそも最初からサニーはスキルも魔法も使っていない。


 なんなんだ。あれは。

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