完全に無欲
というわけで、アルドリーゼのテントにやってきた。
深夜だから、当然誰もいない。玉座も空っぽだ。
だが、仕切りの向こう側に照明が焚かれているから、完全に無人というわけではないようだ。
「おーい。いるかー?」
声をあげてみる。
警備の兵士くらいはいるだろう。
「何者だ!」
勇敢な声をあげて、一人の女兵士が仕切りの向こうから現れた。
アルドリーゼの横でうちわを仰いでいた人だ。
「昼間の救世神だけど。女王さん、まだ起きてる?」
「種馬殿か。王都に帰ったと聞いていましたが」
「ちょっと用があって戻ってきた」
「アルドリーゼ様は入浴中であられます。しばらくお待ちください」
「こんな時間に風呂?」
「寝汗をかいたと仰っておられましたので」
そんなこと教えてもいいのかな。一国の女王の寝汗事情ってすごい機密事項だろ。
「わかった。風呂に案内してくれ」
「は?」
「急ぎなんだ。はやく!」
「は、しかし」
「はやくしてくれ! やばいんだ!」
「一体なにが」
「いいからはやく!」
ひとまず女兵士にまくしたて、強引に浴場に案内させる。
テントの裏。木造の高い塀で囲まれた一画に、露天風呂が設営されていた。
「ちょっとここで待っていてください」
そう言われ、俺は入口の仕切りの前に立つ。
女兵士は中に入っていった。
「アルドリーゼ様。失礼いたします」
「俺も失礼いたします」
「えっ」
待てと言われて待つ奴があるか。
俺は何の躊躇もなくアルドリーゼの浴場に脚を踏み入れた。
「おや~? 種馬くん~?」
大きな木製の浴槽に張られた湯船の中、一糸纏わぬアルドリーゼがリラックスした様子で身体を伸ばしていた。
「お風呂に入ってくるなんて、度胸あるね~」
「すまんな。ちょっと急ぎなんだ」
アルドリーゼの大きな胸をガン見しつつ、俺はこの上なく真剣な表情で話を続ける。
「グランオーリスまで行きたいんだが、そのためにはマッサ・ニャラブを経由する必要があるんだ」
「ふむ~。それで~?」
「道案内を頼みたい。最短でグランオーリスの首都までいけるように」
アルドリーゼの褐色おっぱいの大きさはかなりのものだ。
アデライト先生やアイリスも大したものだが、アルドリーゼはその上をいく。巨乳というより爆乳と形容した方が正しいだろう。
これほどのおっぱいは未だかつてお目にかかったことがない。
「ほんとに急ぎみたいだね~」
「ああ。まじで切羽詰まってるんだ。そうじゃなかったらこんな風に風呂場までこないって。世界の命運がかかってるからな。一国の女王への無礼くらい多めに見てもらわないと」
「ほんとだよ~。これ種馬くんじゃなかったら今ごろ首飛んでるからね~」
おっぱいばっかりに目がいってしまうが、下の方も素晴らしかったと言っておくべきだろう。詳しく形容するのは憚られるが、言うなればなめらかに処理されていたということだ。そういう風習なんだろう。
「あいわかったよ~。じゃあ案内人を用意するね~。どんな子がいいとかある~?」
「別にどんな子でもいいよ。ほんとに急いでるからな。でも強いて言うなら俺と歳が近くて気が弱い子がいいな。あと髪は短めでボーイッシュな感じだったら尚いいと思う」
「そんな子うちにいるかな~?」
「探せばいるだろ。時間かかってもいいから探してくれ」
「あ~い」
すこしバタバタしてしまったが、これでグランオーリスまでの道のりは安泰だろう。俺は王国から出たことがないからな。案内人は必要だ。




