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もう帰るわ

「じゃがアルドリーゼ。今の言い方じゃと、おぬしらはエストを信仰しておるように聞こえるが?」


 アカネの言う通り、王国民と違って神を重視している節があるよな。

 そのあたりはどう考えているのだろう。


「ん~? 余たちは一応、現代の神であるエストを崇めてはいるよ~。でも神が交代するなら信仰の対象も替わるってかんじかな~」


「そんなんでいいのか?」


「いいのよ~」


 よくわからないな。

 ジェルド族の信仰ってのは、俺がイメージする宗教的なものとは違うのかもしれない。


「そういうことなら問題はなかろう。今の王国民はある意味で背信者とも言えるからのう。マッサ・ニャラブの民の方がよほど信心深いのじゃ」


「えへへ~。照れるな~」


 まぁ確かに、神から与えられたスキルに神スキルだのクソスキルだの優劣をつける時点でおかしいよな。


「わかった。それじゃ女王さん、一つ頼みがある」


「え~? なにかな~?」


「エスト消滅に協力してくれ」


「それで余たちに何の得があるの~?」


「知らん。強いて言えば、救世神ロートス・アルバレスに尽くせるっていう栄誉かな」


「あはは~。それはすごいね~」


「そうだ。だから協力しろ」


「いいよ~。おもしろそうだし~」


「よっしゃ。言質とったからな」


 小国とはいえ、一国の協力を得られるのはでかい。これはエスト打倒も近づいてきたような気がするな。

 とはいえ、具体的に何をすればいいのかはあんまり分かっていない。

 ルーチェの言っていたことに準ずるなら、〈尊き者〉と〈妙なる祈り〉と〈八つの鍵〉が必要だ。

 二つはもう揃っている。俺と、俺の力。

 あとは〈八つの鍵〉だが、これがわからない。あと三人はいったい誰なんだ。


「なぁアカネ」


「なんじゃ?」


「〈八つの鍵〉について、何か知らないか? 五人ばかりは見当がついているんだけど」


「そうじゃな。おぬしの身近におることは間違いない。あるいは、身近におったものじゃの」


 俺の運命に引っ張られた人達なんだから、そりゃそうだろうけどさ。それでも目で見て分かるようなもんじゃないから、困ってるんだよな。


「心当たりがある者はおるんじゃろう?」


「まぁ」


「なら、一度じっくり話してみることじゃ。分かったつもりでいながら、その実まったく理解できていない。そんなことはよくあることじゃ。人と人であれば、特にな」


「……なんつーか。意外と堅実なアドバイスだな。いつもみたいにこの世界の真実的なことを言われると思っていたぜ」


「年の功というやつじゃ。伊達に何百年も生きとらん」


「さんくす。アカネの言う通りにしてみるわ」


「素直でよろしい」


「ちなみにアカネってことは……」


「ありえないのじゃ」


「そっか」


 まぁそうだろうな。

 こいつは俺の運命干渉を簡単にはね除けそうだし。

 ふむ。


「それじゃあ俺達は帰るとするか。マッサ・ニャラブが無害ってことも分かったしな」


「え~。もう帰るの~?」


「帰る。やることがあるからな」


「わかった~。暇ができたらまた会いに来てよ~。種馬くんなら大歓迎だよ~。種馬として」


「考えとく」


 救世神を種馬にするその根性は認めるが、それは不敬にあたるんじゃないのか?

 まぁ俺が気にしなかったらいいのか。


 そういうわけで、俺達はアインアッカ村をあとにする。

 両親のことが気がかりだけど、今はいいかな。

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