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思ってたより有名人

 アルドリーゼはわかりやすくがっかりしているようだ。

 周囲の女兵士達も、顔には出していないが同じ気持ちだろうな。


「アルドリーゼ様。申し訳ありません。クソスキルの持ち主を連れてきてしまうとは……誇り高きジェルド族の一員として恥ずべきことです」


「この男がクソスキル持ちだと見抜けなかった我らの愚かさ……どうか厳罰に処してください。どのような罰も甘んじて受けましょう」


「いや、こんなことは不覚にもほどがある……こうなっては、我らの命をもって償うほかないだろう……」


 うそだろ。なんか話が物騒になってきていないか。


「あ~待って待って。別に気にしなくてもいいよ~。この種馬くんは確かにまったく生きる価値のない下等生物かもしれないけどさ~。それを見抜けなかったからって怒ったりしないよ~。逆に見抜けてたらすごいよ~。こんなクソスキルしか持たない卑しくて低俗な生物~」


 ひどい言い草だ。

 俺が種馬になりたくないからってスキルを偽っているという可能性を考慮しないのだろうか。


「でも、そっか~。クソスキルか~。ちなみに職業はなんなのさ~?」


「聞いて驚くな。俺は『無職』だ」


 どうだ、ざまぁみろ。

 思い知ったか。


「え……?」


 アルドリーゼが固まる。

 そしてなにやら、女兵士達もざわざわし始めた。


「え~っと~。もういっかい言ってくれるかな~?」


「『無職』」


 どや。

 これは完全に、ある意味レアな最弱劣等職の『無職』を見て驚いている。あまりの下劣さに呆れ果てているんだろうな。

 そうに違いない。それ以外考えられないだろ。常識的に考えて。


「アルドリーゼ様っ。これはもしや……」


「うん~。もしやもしやだね~」


 急にアルドリーゼがずいっと身を乗り出し顔を近づけてきたものだから、俺はびっくりして後ろに倒れそうになる。


「〈尊き者〉ロートス・アルバレス」


 ほんの一瞬。アルドリーゼの顔と声色が真剣身を帯びたものに変わる。

 その顔はすぐに、にへら、としたいやらしい笑みになった。


「なるほどね~そっかそっか~」


 マジか。やばいぞ。下手を打ってしまったかもしれない。

 まさかマッサ・ニャラブにまで俺の存在が知られているとは思っていなかった。

 こいつらが俺をどういう位置づけにしているかは知らないが、どうでもいいとは思っていないのは確かだ。


 どうしたものだろう。

 まぁいっか。どうとでもなるわ。


「俺を知っているみたいだけどよ。だったらどうするつもりだ? やっぱり種馬にする運びか?」


「いや~。これどうしよっかな~」


 腕を組み、大きく首を傾げるアルドリーゼ。


「とりあえず~。余のテントまで来てもらおうか~」


 来いというなら行くけどさ。

 〈尊き者〉を知っているなら、エストを倒すために役立つ情報も持っているかもしれないしな。


 周りの女兵士達の視線が俺に集まっている。その目は先程までの見下した雰囲気とは違い、何か違うまなざしに変化していた。

 ジェルド族が帝国と同じ感覚ならば、俺は敬われることになるんだろうけど、それともすこし違う感じだ。

 さて、一体どうなるのか。

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