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サラ、最強やな

 深夜の話だ。

 俺はサラに連れられ、学園の敷地内をふらふらと歩いていた。


「どうしたんだよ。急に散歩なんかしたいなんて」


「だってあれですよご主人様。全然会えてなかったじゃないですか」


「まーな」


「だから、ご主人様との時間をいっぱい取りたいのです」


 かわいいことを言うやつだ。

 俺の腕を取って歩くサラは、めちゃくちゃ嬉しそうだった。言葉では表現できないくらいの嬉しさなんだろう。


「ご主人様ったら、ボクがいない間にたくさん女の人増やしてるんですもん。ちょっと妬けちゃいます」


「別に意図して増やしてるんじゃないって。それに、増やしてるって表現もなんかおかしいだろ」


「意図しないのに増えてる方がだめですよ。まぁ、ご主人様の体質じゃ仕方ないのかもしれませんけど」


 関わった人の運命に干渉するからな俺は。

 あまりよろしいことではないんだろうけど、美女や美少女ばかりに干渉するっていうのは役得といえるかもしれない。


 あれだろ。俺の潜在意識的なものが影響してるんじゃないのか? 素敵な女性とステディな関係になりたいってな。ステディって死語か?


「あの人も大変ですよね。エレノアさんでしたっけ」


「あいつがどうかしたか?」


「だってあの人、ご主人様を独り占めしようとしてるじゃないですか」


「ああ。それか」


 独り占めというと語弊があるだろう。

 いや、ないのか?


「一人の男に一人の女。それが王国のスタンダードだからな」


「ボク達の種族はそんなことないのに。人間の制度って複雑ですね」


「そうかな。俺にはよくわからないけど」


 まぁ、個人的には一夫多妻制の方が夢があるとは思う。

 一説によると、一夫多妻は女性に有利なシステムらしいが。実際のところどうなんだろうな。


「こういうことは大切なのです。家庭内不和が起きないように、妻たちの扱いはきちんと決めておかないと。ちなみにボクは正妻じゃなくて大丈夫ですので」


「なんでさも当然のように、俺達が結婚することになってんだ」


 身分上では俺とサラは主人と奴隷のはずなんだが。


「残念ながら拒否権はないですよ。ご主人様はボクを傷物にしたんですから。ちゃんと娶ってもらいます。マルデヒット族にはそういう鉄の掟があるんです」


「ほんとに?」


「ウソです。いま作りました」


「おい」


「でもご主人様は、責任も取らず逃げるなんてことしませんよね?」


「……当然だ」


 ああ。なるほど。

 こいつ分かって言ってやがるな。

 エストを消せば俺は忘れられるってことを知ってるんだ。


 だから、忘れられるなって暗に言ってるんだ。

 もし忘れられたとしても、諦めずにちゃんと取り戻せって。

 そう言ってくれてるんだな。


「サラ。お前ってさ」


「なんですか?」


「いや……なんでもない」


 あの奴隷商の言ったとおりだ。

 いろんな意味で、ワケありだったな。サラは。


「幸せ者だよ。俺」


「はい。知ってます」


 月明かりが照らす無邪気な笑顔は、俺の心の暗雲を取り除いてくれるようだった。

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