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成長と勝利

 石像が再び腕を振り上げる。


「来るぞ……!」


 端っこに追いやられた今、避ける余裕はない。

 活路は前に見出さななきゃならないな。


「ロートス、恐れることはないのじゃ。おぬしの力の前ではエストなぞ塵芥も同然。神の名を騙るでくの棒に過ぎん」


「そうかな」


 俺もそう思っていたんだけど、どうにもこいつには『妙なる祈り』の効果が薄い。エストの由来のものならば、俺の力で一瞬にして消滅させられるはずなんだが。


 石像が腕を振り下ろす。


「ロートス! 合わせるのじゃ!」


「おうっ!」


 アカネが構えたのと同時に、俺も拳を握った。

 迫る巨拳を、俺たちの拳が迎撃する。


「おっらぁッ!」


 重たい手応え。

 やった。石像のパンチを弾き飛ばしたぞ。


「あやつにはピストーレの坊やの力が付与されておる。おぬしの祈りが効きにくいのはそのためじゃ」


「あれか。『ホイール・オブ・フォーチュン』ってやつか」


 アカネは頷く。


「じゃが案ずるでないぞ。『妙なる祈り』の真の力が解放されておらずとも、今のおぬしならあやつを倒せる。ロートス、すべてはおぬしの信念の強さ次第じゃ」


「アカネ……お前は一体、どこまで知ってるんだ」


 前々から謎だった。

 ダーメンズ家初代当主の娘だったり、ヘッケラー機関の初期メンバーだったり、本当のところ、アカネは何者なんだろうか。


「じっくり説明している暇はないようじゃ」


 石像は再びこちらを向き、性懲りもなく拳を振り上げる。

 だが先程とは違う。光が拳に集中し、その輝きを増していく。


「エスト消滅の前哨戦といこうではないか。ロートス、やってみせるのじゃ」


「……わかった」


 俺は前に進む。

 ゆっくりと、石像へと歩み寄っていく。


「あいつをぶっ倒して、サラを助けに行く」


 それが最優先事項だ。


「いくぜ」


 石像の拳は極限まで強化されている。奴の一撃は山をも砕くに違いない。

 だがそれがどうした。

 俺は拳を握りしめる。


「所詮は作られた神。しかもその化身だろ」


 こいつを倒せないようじゃ、目的を果たすことなんて無理だ。

 エストを倒し、縛られた運命から世界を解放する。

 戦争を止めて、大切な人たちと、みんなが生きる場所を守る。

 そして。


「のんびりスローライフを過ごすんだよ……!」


 石像の拳が、放たれた。

 圧倒的な速度と圧力。

 俺は自身の拳をもって、それを受け止めた。

 拳と拳が激突する。

 眩いばかりの閃光が塔の屋上を、否、空を埋め尽くした。


 次の瞬間、石像の拳に亀裂が生じる。

 そして、腕ごと粉微塵になって砕け散った。


「楽勝すぎんだよなぁッ!」


 俺は跳躍する。

 そして石像の顔面に、渾身のパンチを叩きこんだ。

 巨大な頭部が破裂。さらに、全身までもが塵となって空に溶けていく。


 クラス分け試験の時は手も足も出なかったのに、今の俺なら余裕で勝てる。

 俺はいつの間にか、強くなっている。異常なほどに。


 それでいい。そうじゃないといけない。

 異世界でスローライフを満喫するには、神を滅ぼせるくらいの力が必要だってことなんだよ。

 たぶん。

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