あれをください
巨大な扉は石造りのようで、なにやら神秘的なレリーフが刻まれている。
きわどい服装の幼女。大鎌を手にしている。どこかエンディオーネの面影があった。
その扉に、青白い光が走る。刻印をなぞるように輝いている。
「これは……」
「私に反応してるみたいね」
まじか。
エレノアはファルトゥールに召喚されたと言っていた。
俺とは違う。その謎が、これから解明されるのだろうか。
音を立てて開いた扉。エレノアは迷いなく足を踏み入れる。
俺も深呼吸し、その後を追った。
扉がひとりでに閉じた時には、さしもの俺もびっくりしてしまう。
「暗くなったな」
俺はクソスキル『ちょっとした光』を発動する。
頭上に小さな光の玉が生まれ、内部を淡く照らした。久しぶりに使った気がするな。
「神殿にしちゃあ神々しさのかけらもないな」
中はそのまま円形であり、仕切られてはいない。
床や壁には扉にあったようなレリーフがびっしりと刻まれている。文字のようなものや、女神を象ったもの。人やモンスターのようなものがあるとこを見るに、歴史を表しているのだろうか。
「ここは、女神ファルトゥールの寝所みたい。いいえ、お墓って言ったほうがいいかしら」
「墓? 死んでるのか。女神は」
「死んだように眠ってるのよ」
じゃあ死んでないじゃん。
「頂上を目指せばいいのか?」
「いいえ」
エレノアは広間の中心へと歩を進める。
すると、足元から青白い光が走り、床と壁一面を駆け巡った。
「おお」
分厚い振動が塔を震わせる。
「地下に下りるのよ」
なんと。
塔というからには上を目指すものかと思っていたが、どうやら先入観に囚われてしまっていたようだ。
まさか地下とはな。
振動はそのままに、床そのものが下降していく。この世界にもエレベーターがあったのか。
エレノアは壁のレリーフを見渡しながら、真面目な表情をしていた。
そしてエレベーターは止まり、たどり着く。
「女神ファルトゥールの祭壇よ」
そこは青白い光で彩られた大伽藍だった。
規則的に並んだ白い柱は、古代ギリシャのパルテノンを彷彿とさせる。
「ここは神殿っぽいな」
俺の感想をよそに、エレノアはずんずんと先に進んでいく。
「エレノア。待てって」
祭壇の目の前で立ち止まった俺たちは、そこに祭られている巨大な女神像を見上げた。
大鎌を持ったきわどい服装の幼女。
「これが、女神ファルトゥール? まんまエンディオーネじゃねーか」
やはりファルトゥールとエンディオーネは同一の存在だったのか。
どういうことだ。
考えていると、女神像の目に光が灯る。
〈よくぞここまでたどり着きました。アルバレスの申し子よ〉
こいつ……脳内に直接?




