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最上階になんかあるやつ

 現れたのはルーチェ、そしてアイリスだった。


「ごめん、ロートス君。見つけられなかった」


 肩を落として首を横に振るルーチェ。


「学園中を探し回ってみたのですが……」


 アイリスはいつもの微笑みだ。


「そうか。仕方ない。無事だといいんだが」


 セレンには従者もいないからな。友達も少なそうだし。

 あ、そうだ。


「先生。セレンがどこに行ったかとか、知りませんか?」


 俺たちの担任なのだから、もしかしたら知っているかも。


「オーリスさんですか? いいえ、特に何も聞いていません。戦争が始まってからは授業も休講になっていますし、もしかしたら王都を離れているのかも」


 そうだといいんだけどな。

 心配だが、今は他にも気にしなきゃならないこともある。


「ルーチェ。サラを出してくれるか。先生」


「はい。こちらにお願いします」


 先生が壁際を指す。そこには大きな研究器具のようなものが鎮座している。

 ルーチェは首にかけたアイテムボックスに触れ、その台座の上にもう片方の手をかざした。

 その場が光り輝いたかと思うと、なんとも不思議なことに、その台座の上にサラを内包したクリスタルが現れていた。


「ほう。これがアイテムボックスか。話には聞いていたが、実際目にするのは初めてだ。なかなかどうして奇妙なものだな。帝国の魔導技術とは」


 フェザールが感心したように呟いている。


「しばらくは様子見ですね。下手にこの状態を解除して取り返しのつかないことになったら大変です」


 先生の言うとおりだ。

 焦る気持ちもあるが、ここは我慢だろう。

 もう少しだけ待ってくれよな、サラ。


「ああ、そうそう。ロートスさん、たしか帝国の大臣を捕らえていましたよね?」


 そういえば。

 ほとんど忘れていたな。


「そいつもアイテムボックスに収納されてますよ。だよなルーチェ」


「うん。出した方がいいかな?」


「お願いします。何か手掛かりになることを知っているかもしれません」


「わかりました。じゃあ――」


 ルーチェが床に手をかざす。

 その時だった。

 地鳴りのような轟音と共に、建物が大きく揺れ始めた。

 俺はたまらず膝をつく。


「何事だ!」


 それまで椅子の上で船を漕いでいたフィードリットが目を覚まして飛び起きる。

 地震か? だがこのタイミングだと、ただの自然現象とは思いにくい。


「主様! ご無事ですか!」


 部屋に入ってきたのはシーラではなく、守護隊の一人だった。以前俺がおっぱいに顔をうずめた娘だ。


「何が起こってる?」


「地面から、塔が生えています!」


 塔が?


「大地を突き破って、巨大な塔が生えているんです!」


 なんとなくイメージできる光景だな、それは。


「先生、学園の地下に塔が埋まってるんですか?」


「いいえ、聞いたことありません。そんなの」


 先生は屈んだまますっと瞳を閉じる。『千里眼』を使うのだろう。


「これは……たしかに塔が生えています」


 地面から塔が生えるなんて。動力とかどうなっているんだ。この世界でそんなこと考えるだけ無駄か。


「講堂前の広場です」


 クラス分け試験で集合した場所か。

 しばらくすると地鳴りも振動も収まる。

 なんか、急に静かになったな。

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