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俯瞰しよう

「プロジェクト・アルバレスとプロジェクト・サラは、二つで一つ。揃って初めて意味をなすものでした。しかし、プロジェクト・アルバレスの失敗よりその計画は大きく軌道修正せざるを得なかった。しかし、そこでとある事件が起きました。実験体であった獣人が脱走し、研究を人員もろともめちゃくちゃにしてしまったのです」


「先生。それってまさか……」


「はい。ウィッキーがやりました」


 なんということか。

 あれだろ。シーラ達に『ツクヨミ』をかけて回ったっていうやつ。


「その結果。プロジェクト・サラも破棄に追い込まれました。サラちゃんは廃棄処分され、奴隷に身を窶すことになった」


 そいつはなんとも複雑だ。

 ウィッキーの行動はサラを救うためで、しかしそれは叶わず結局姉妹の溝を深めるだけだった。けれど、今の話を聞くと結果的にはサラを救っていたんじゃないだろうか。奴隷になってしまったとはいえ、女神の依り代にならずに済んだのだから。


「その後、機関はサラちゃんの代わりになる存在を探すことになった。ですがその研究も今は滞っています。亜人が蜂起し、親コルト派がクーデターを起こし、国を乱しているからです」


 そして今に至ると。

 なるほど。

 そういう風につながっていたのか。


「おそらく亜人連合の盟主にサラちゃんが選ばれた背景には、プロジェクトを知る何者かの陰謀があるはずです。十中八九、帝国の仕業ですね」


「帝国はサラを大魔法のエネルギー源にしようとしてましたけど、本当の目的は他にあるってことなんですかね?」


「女神ファルトゥールを降臨させることで、エストのはたらきを抑えようとしているのかもしれません」


 そういえばあの大臣がなにか言ってたな。スキル至上主義は気に入らないけど、スキル自体は有用だから必要だって。つまり、ファルトゥールとエストをどっちも存在させることによって、中途半端な状態、良く言えばバランスの取れた状態をつくろうと狙ってたってわけかな。


「サラちゃんが魔力の結晶に覆われた理由もそれなのです。どのような方法かはわかりませんが、帝国の者がサラちゃんに施されていた実験を再開したのでしょう。あの子は女神ファルトゥールの憑依から身を守るために、自分の魔力を固めその中に閉じこもった。私はそう推測します」


 先生の推測なら間違いないだろう。

 なるほどな。

 だんだん話、読めてきた気がする。


 たくさんの事件が絡み合った複雑な事態のように思えるけど、マクロな視点から単純化すると、女神ファルトゥール派と最高神エスト派、そしてどっちでもない第三勢力の三つ巴の争いってわけか。

 合点がいったぜ。

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