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ついてきちゃったんですか

 エレノアが言っていたことを思い出す。

 クラス分け試験の評価基準に、どのダンジョンを選ぶのかが含まれているんじゃないか。もしそうだとしたら、俺の選択は誤っていたことになる。


「サラ。このメダルをそのまま持っていくことについて、どう思う?」


「別にいいんじゃないですか? 早く終わらせるに越したことはないでしょうし」


「バカ。それじゃあ余計な評価をされちまうだろうが。俺は目立ちたくないんだ。平均点かそのちょっと下あたりを狙いたいんだよ」


「それでしたら……」


 サラはうーんと腕を組む。


「だったらいっそのこと捨てちゃったらどうですか? そのメダル。それで、他のダンジョンに新しいメダルを取りに行くとか」


「あれだけ苦労して手に入れたメダルを捨てる? そりゃいい考えだな」


 何度も言う。俺の行動理念ランキングには、目立ちたくない、が堂々の一位に輝いている。その為なら、どんな苦労も功績もドブに捨ててやる。

 とりあえず俺は、足元にメダルをポイ捨てした。幸運な誰かが拾ってくれることを信じて。


「ん?」


 足元に違和感。


「ご主人様! これって……!」


 おいおい、ウソだろ。

 俺の足元には、あの大人しくなったスライムがいた。


「ついてきたのかよ……」


 コンビニエンスストアほど大きかったスライムは、今やバレーボール大に縮んでいる。俺がイメージする某RPGのスライムっぽい。目と口はないけど。


「どうすんだよこれ」


「どうしましょう」


 俺もサラも困っている。


 うーむ。


 スキルでテイムしたことにすればなんとかなるかもしれないが、見る人が見ればすぐにバレるだろう。俺にテイム系のスキルがないことは学籍情報にも登録されている。

 なにより、スライムなんか連れていたら目立つことこの上ない。


「おい、お前」


 俺はしゃがみ込んでスライムを睨みつける。


「俺にお前の面倒を見てやれる余裕はない。ついてきてもらっちゃ困る」


 分かっているのかいないのか、スライムは小さく震えていた。


「あの、ご主人様。この子、お腹が空いているんじゃなかったでしたっけ?」


「ああ、そうだ。だから人を襲っていた。俺の『ノーハングリー』で誤魔化したみたいだけど」


「ご主人様がこの子から離れちゃうと、また同じことが繰り返されるんじゃ……」


「そうは言ってもな」


「それにこの子。もうご主人様に懐いてるみたいです」


 まじか。


「スキルなしでモンスターをテイムするなんて、やっぱりご主人様はものすごい『無職』ですね!」


 しかしどうしたものか。ダンジョンで生まれたモンスターが外に出てくるだけでも事件なのに。


「仕方ない。とりあえずこれに入れておくか」


 俺は懐からビンを取り出す。今は空だが、王都への旅で飲み水の容器にしていたものだ。


「やいスライム。ついてきたいならこの中に入れ。イヤなら大人しく森へお帰り」


 俺がビンを置くと、スライムは迷う素振りも見せず中に収まっていった。

 そんなについてきたいのか。しょうがねぇなぁ。


「ご主人様の魅力には、スライムでさえメロメロってことですね!」


「サラ。いつも俺を肯定してくれてありがとな。めちゃ自信に繋がる」


「本心を申し上げているだけです!」


 ああそうかい。それが一番ありがたいんだよ。


 それはともかく。


 不本意ながらスライムを仲間にした俺達は、平均的評価を得るために他のダンジョンに向かうことにした。

 目指すは、捨てられた神殿だ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 嘘だろ、こんなに日本語が上手い中国人がいるのか!世界は広いぜ!(褒めてる) ところでこんなに強いスライム連れてたら主人公食われない?
[気になる点] 真好看這集
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