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一計を案じる

 突如として広場に躍り出た俺に、当然その場の三人は驚く。


「誰っ? あぶないわよ!」


 エレノアが声を飛ばす。


「そのスライムは普通じゃねぇ! 見たらわかんだろ!」


 マホさんの警告はもっともだが、俺にも一計があるのだ。

 スライムの目の前に陣取った俺は、イキールを一瞥し、メダルの方を指さした。


「なんだ? 今のうちにあれを取れと?」


 俺は頷く。


「馬鹿を言うな! そんな施しを受けるような真似ができるか!」


 だったら早く逃げろよ。馬鹿はお前だろ。

 巨大スライムが大きく揺れた。攻撃の前兆だ。


「逃げて!」


 安心しろエレノア。俺は大丈夫だ。たぶん。

 スライムの触手の標的は俺に移ったようだ。本体から伸びた長い触手が、凄まじい勢いで俺に迫る。


 だが。


 いいのか。スライムさんよ。

 俺はすでに発動しているんだぜ。


 クソスキル『ノーハングリー』を。


 眼前まで迫った触手は、俺に触れる直前で動きを止めた。


「なに? どういうことだ?」


 イキールも困惑している。


「止まった? どうして?」


「わからねぇ……テイム系のスキルか?」


 世の中には獣やモンスターを手なずけるテイム系のスキルが存在するが、生憎クソスキルしかない俺にそんな便利なスキルはない。


 簡単なロジックだ。


 スライムは腹が減っていて、だから人間を襲っている。

 そして奴は、目の前の人間のスキルをコピーできる。

 俺は、『ノーハングリー』を発動している。

 つまり、俺のスキルをコピーし空腹を忘れたスライムは大人しくなる。


 Q.E.D.証明完了。


 俺の考え通り、スライムは活動を停止した。触手を引っ込め、うごうごと揺れているだけだ。

 やがてスライムは小さくしぼんでいき、俺の足下で平べったくなった。


「うそ……本当にテイムしちゃった」


 いや、違うぞエレノア。テイムしてない。


「まじかよ……同じ新入生でも、こんなに格が違うもんなのか」


 マホさん違うよ。勘違いしないで。


「悔しいが、認めるしかないようだな。己の未熟を」


 俺より百倍は強いと思うよイキール君。自信もって。


 やばい。いま俺目立っていないか? 三人と一体から注目を浴びている。

 そんなのはごめんだぜ。


 脱兎のごとく。俺は広場から逃げ出した。


「あっ、待って」


 エレノアに呼び止められるが、知ったことか。

 どうせあいつらは戦いのダメージで追っては来れないだろう。今のうちに退散だ。


 俺はサラを連れ、さっさとこのダンジョンから抜け出した。

 ローブをサラに返すことも忘れない。耳と尻尾を隠さないと大変だからな。


「ご主人様かっこよかったです!」


 ダンジョンから出た矢先、サラが手離しの称賛を浴びせてきた。


「ピンチの人達を華麗に助けて、見返りも求めないなんて! おとぎ話の勇者様みたいです!」


「おう。そうだろう。もっと褒めていいぞ」


「ステキ! かっこいい! 男前! 最強! 『無職』!」


「最後のは違うだろ」


 ともあれ、俺はメダルをゲットした。

 このまま『タイムルーザー』で時間を潰してもいいが、サラをほったらかしにするのも可哀想だ。


 それに、俺にはとある懸念があった。

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