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精神世界ってVRみたい

 気が付くと、俺は宿の裏に立っていた。

 神族会議に行く前と同じ場所だ。


「どうだった? 空の上は」


 俺の額から手を離し、マホさんが一息ついた。


「どうって……」


 よくわからなかった。


「マスター。空の上というのは?」


 アイリスが首を傾げる。


「ああ。ちょっと宇宙みたいなところにいってたんだ。神族会議に参加しにな」


「うちゅう? マスターはずっとこの場にいらっしゃったのにですか?」


「え?」


 ずっとここにいた? どういうことだ。


「あー」


 マホさんが咳ばらいをする。


「あの場所は、いわゆる精神世界ってやつだ。ロートス、お前の心だけを、あの場所に連れていったんだよ。アタシもそうだし、ほかの神族達も同じだ」


 なるほど。

 精神世界か。なんか、どこかで聞いたことがあるような。

 まぁいい。


「マホさん、ちょっと話が」


「ああ。そうだろうな。お前さんとエンディオーネのやり取りを聞いてたらわかる。ただならぬ関係だってな」


 そうだ。

 俺だけじゃない。もしかしたら、エレノアもあの死神少女が連れてきたのかもしれないのだ。


「けど、アタシに話せることはすくねぇぞ。神族は世界の管理については情報共有をするが、それぞれいつも何をしているのかなんて知ったこっちゃねぇ。特にあのエンディオーネは得体の知れない存在だ。もともとこの世界の神族じゃなかった、なんて言ってたしな」


 ふむ。

 やっぱりあの幼女、なにかしらの裏がありそうだ。

 フェザールによれば、俺とエレノアをこの世界に連れてきたのはヘッケラー機関ということだった。そして、その下手人があのエンディオーネなのだろう。

 つまり、マシなんとか五世とエンディオーネには繋がりがあるってことだ。

 ますますややこしいことになってきたな。


「直接あの幼女に話を聞きたいですね……」


「難しいな。どこにいるのかもわからねぇんだ。神族会議にもいつも遅刻してくるしな。つかみどころがねぇ」


 まったくだ。


「ロートス。気になることもあるだろうが、今は目の前のやるべきことに集中したらどうだ。明日、お前さんはエストを消滅させるんだぜ?」


 そうだった。

 それもおろそかにはできない。

 世界の運命を変えるために、最高神エストは邪魔なんだからな。


「えーっと、エストを消滅させるっていっても、いったいどうやって?」


「それについては明日説明があるだろうさ。お楽しみってやつだ」


 ぶっつけ本番になるのか? いくらなんでも無茶だろ。

 いや、いままで無茶をし続けてきたのはほかでもない俺自身だ。神を滅ぼすくらいなんてことないか。十人の神族が協力してくれるわけだしな。


「しっかし、お前さんも妙なやつだな。戦争を止めようなんて、正気の沙汰じゃねぇぜ」


「守りたい人がいますからね、仕方ありません」


「つってもよ。だったらそいつらを連れて戦争のない国とかに行けばいいじゃねぇか。戦争を阻止するよりよっぽど現実的だろ」


「いや」


 実はそうでもない。

 この世界で、俺は痛烈に学んだことがある。


「誰も、運命からは逃げられないんですよ」


 目を逸らしても、居場所を変えても、運命は常に自分の中にあるのだから。

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