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考えはあるさ

「まぁ、なんだ。アタシの素性はそういう感じだ。プロジェクト・アルバレスについて、アタシもそこまで詳しいわけじゃねぇ。アタシの役割は、エレノアの成長を見守ること、って言やぁ聞こえはいいが、要はデータ取りってわけだ」


 マホさんの視線がベッドに向けられる。


 俺は腕を組む。というのも、シーラのサラに対する感情を思い出していたのだ。

 シーラは、サラとのコミュニケーションを仕事だと割り切っていた。仲良くしていたのも、効率よく研究を進めるためだと。


 それと同じことが起きているのかと思ったが、そうじゃない。

 マホさんはエレノアが生まれた時から一緒にいる。いわば幼馴染。

 マホさんの目を見ればわかる。情が移ったとかそういうレベルじゃなく、心からエレノアを大切に思っているのだろう。彼女達は公には主従だけども、実際は姉妹のような関係なのだから。


「プロジェクト・アルバレスは破棄されたと聞きました。けど、アインアッカ村で極秘に続けられてた。それはどうしてです?」


 マホさんの目が再び俺を見る。


「そいつはここでは言えねぇな」


 一段トーンの下がった声だった。


「この話は次の機会にしようぜ。今は、ロートス……お前さんのこれからについて考えるべきだ」


 はぐらかされた。

 まあいい。マホさんにも事情があるのだろう。

 それに、俺自身のこれからも重大なことには違いない。


「お前さん、戦争を止めるって言ってたが、具体的にどうするとかってあるのかよ?」


「そこです」


 核心をつくマホさんの言葉に、俺は深く頷いた。


「なんか考えがありそうだな」


「一応は」


 俺だって、考えなしに突っ走ってるわけじゃない。考えなしに突っ走っているように見せかけておいて、その実いろいろと頭を使っているのだ。


 うん。

 少なくとも俺はそう思っている。


「今回の亜人連合の蜂起。このバックには帝国がついてる。そして、ヘッケラー機関もだ。マホさんは、アインアッカ村の神父が帝国の大臣と繋がっていたことを知ってました?」


「なんだって?」


 マホさんの目がぱちくりと開く。


「あのじじい……アタシらに隠れてこそこそそんなことしてやがったのか」


 どうやらマホさんは知らなかったようだ。この言いぶりからすると、村の人達も知らなかったっぽいか。


「どうりでああも簡単に村が落ちるわけだ。最初からグルだったってわけか」


 アインアッカ村が亜人連合の手に落ちたのは、やっぱり神父が裏で手を回していたからだろう。そうじゃないと、機関の構成員である村人たちが黙ってはいないはずだ。

 となると、うちの両親も生きてはいそうだな。


「そう……だから、俺は帝国に直談判をしに行こうと思う」


「は?」


「帝国を止めれば、亜人連合も止まるはず。この国の連中を説得するのは、それからでも遅くないかなと」


 マホさんはおでこを押さえて天井を仰ぐ。


「馬鹿にもほどがあるぜ……やっぱ何も考えてねーな、お前さんは」


 失礼な。

 限りなく完璧に近いプランだろう。

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