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ちゃんと仕事して

「ははっ。まぁそう驚くこたぁねぇ。末裔っつっても、神族の血はほとんど残ってねぇ。元を辿ればってだけだ。その証拠に、ほら、アタシにはスキルがあるだろ?」


 呆気にとられていた俺に、マホさんが苦笑する。

 その証拠にとか言われても、何のことかわからない。神族はスキルを持っていないということだろうか。


「神族の時代。アタシら末裔は神代と呼んでるが、その時代は争いもなく、神族を中心にあらゆる種族が平和に暮らしていたらしい。だが、ある時、突然湧いて出たように人間を名乗る種族が現れた」


 突然湧いて出たように?


「そんなことありえるんですか?」


「さぁな。アタシにもわからねぇ。言い伝えによれば、人間は神族とほとんど同じ姿で、高い知性を持ってたって話だ」


「高い知性……それから、どうなったんです」


「人間は、他の種族を威圧し、この世界の頂点に立とうとしたんだ」


「なんだそりゃ」


 意味が分からない。いや、俺も人間だからそんなこと言ってられないんだろうけど、やっぱり意味が分からない。


「順を追って説明するとだな。まず人間らは自分たちが現れた土地に国をおったてて、そこから周囲の種族達を攻撃、支配していったみてぇなんだ」


「侵略ってことですか」


「そういうこった」


「どうしてそんなこと」


「そりゃ、今の人間を見りゃわかるだろ。どいつもこいつも自分の国のことしか考えてねぇ。他の国や種族の事なんて、養分にしか思ってねぇだろ?」


 確かに。

 あくなき欲望は、人間の業ともいえる。


「人間ってのはそういう生き物なのさ。他者を虐げ、甘い蜜を吸うことに人生をかけるんだ」


「否定はしませんけどね……」


 元の世界でも、そういう人間は多かった。心から他人のことを思える人間なんて、俺の周りにも両手で数えるほどしかいなかったような気がする。


「まぁ、人間達が好き勝手しやがった結果、神族が種族総出で対処したんだとさ」


「対処って?」


「最高神エストの創造だ」


 ここでエストが出てくるのか。


「神族は、人間に運命っつー枷をつけることで制御しようとした。それまで限界を知らなかった人間の行動に、制限をかけたのさ」


「神族にはそんな力が?」


「ああ。神族は、みんなそれぞれの異能を持っていたらしい。神の権能ってやつだな」


「かっこいい」


「はは。確かにな」


 マホさんは頬杖をつく。


「ま、そのせいで神族は力を使い果たし、ほぼほぼ滅びちまったのさ。生き残ったのは僅か、今じゃ神族の血を受け継ぐのは十人いるかいないかってとこだな。血を色濃く受け継いでいるとなると、三人いるかどうか」


「やばいですね」


「ああ。やべぇな」


 しかし。ますますわからないな。


「どうしてマホさんはヘッケラー機関に?」


「……アタシら神族の末裔は、人間がまた馬鹿をやらないように、コントロールする使命があるんだよ。だから、世界的に力をもつ国家や組織に紛れこんでる」


「つまり、スパイだと」


「似たようなもんだな」


 なるほど。

 ヘッケラー機関をはじめ、世界に対して影響力のある団体の活動を制御していると。

 マホさんには悪いけど、正直、機能しているとは思えないなぁ。

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