表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
220/1001

貴族の矜持、平民の意地

「甘ったれたことを言わないでくれるか。国家の危機なんだ。キミたちは平民かもしれないが、この国の最高学府で最優秀だと評価される者達だろう。その能力を、どうして国家の為に使わない?」


「それは……だからって戦争なんて……」


「そうですよ! ここに来たのだって、正規軍の支援って言われてたのに。実際に戦闘をするなんて聞いてないですよ」


「そうだそうだ!」


「戦争反対!」


 上級生達の声が重なっていく。

 伝令の兵もちょっと焦っている。矛先が侯爵の息子であるせいか、下手に口を挟めないのかな。


「そうか」


 イキールは呆れたように溜息を吐く。


「ならばキミ達は後方で膝を抱え、虫のように縮まっていればいい。亜人どもは僕とリッターが引き受けよう」


 力強く発したイキールに、上級生たちが静まり返る。予想外の返答だったんだろうな。


「いや……」


「それはちょっと、無理があるんじゃ……」


 急に威勢を失う上級生。


「話にならないな。建設的な意見を出さず、口々に文句を言うばかりとは。これだから平民は愚かだというんだ」


 失望の目を上級生らに向け、イキールはわざとらしく鼻を鳴らした。


「伝令」


「は、はっ」


「亜人共が侵攻してくるポイントまで案内を頼む。それくらいの目処はついているのだろう?」


「もちろんです。直ちに!」


 戦闘を前にしても冷静を保つイキールに、俺はなんとなく感心した。

 なんというか、流石は貴族ってやつなのかもな。

 ヒーモの時も思ったが、いざという時の肝の据わり方が違う。このあたりは普段どんなことを考え、何のために努力をしているのかで差が出てくるのだろう。

 貴族ってのはただ単に身分が高いだけの奴らかと思っていたが、貴族には貴族の矜持や信念があるんだろうな。


「待って」


 それまでだんまりを決め込んでいたエレノアが、歩き出したイキールを呼び止めた。


「なんだ」


 振り返ったイキールに、エレノアの強いまなざしが刺さる。


「私も行くわ」


 エレノアの宣言に皆が驚く。隣のマホさんは、自身の白いおでこを押さえていた。


「流石に二人じゃ足りないでしょう?」


「キミがくれば足りると?」


「ええ」


 エレノアは自信ありげな表情で頷く。


「私とマホさんが加わって、ちょうどいいってところかしら」


「はは。大した自信じゃないか」


 ほんとそうだよ。

 エレノアのやつ、どうしてあんな自信満々なんだろうな。

 エルフに魔法を教わって、急激に力をつけたのだろうか。

 それでも百人と戦うなんて、無謀にも程がある。なんとかエレノアとマホさんだけでも守りたいものだが。


「では行こうか。情けない上級生よりも、キミの方がよほど頼りになりそうだ」


 そして、イキール、リッター、エレノア、マホさんの四人は、伝令に連れられて戦場に出発した。


 これは本格的にやばいな。

 なんとかしないと。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ