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タイミングって難しい

『ロートスさん。エレノアちゃんのためにも、くれぐれも軽率な行いは慎むように。よく考えて行動してください』


「わかってます。冷静にやってみますよ」


 俺は念話灯をウィッキーに返す。


「ロートス? 先輩はなんて?」


「大丈夫だ。大きな問題はない」


 とは言ったものの、一体どうしたものか。


「みんな。ちょっといいか?」


 俺は深呼吸し、全員を見渡す。


「俺はアイリスを迎えにいく。みんなはこのままカード村を抜けて、アインアッカ村に向かってくれ。そこで合流しよう」


「なに言ってるの? そんなの」


 当然の如く、ルーチェが反論する。


「どうしてロートスくんがアイリスのところへ行くの? なんの意味があって」


「野暮用ができたんだ。ルーチェ。お前達はサラを確実に連れて行ってくれ」


 アイテムボックスはルーチェが持っている。サラもその中だ。最悪俺がいなくても、大丈夫なのだ。


「また離れ離れっすか?」


 ウィッキーが恨めしげな視線を送ってくる。しかし、俺も退けないのだ。


「すぐに戻る。アイリスを連れてな。なに、トイレに寄る程度の感覚さ」


「でも――」


 まだ何か言おうとするウィッキーに対し、俺は彼女の胸倉を引っ掴んで引き寄せた。


「あ」


 そして、強引に唇を奪う。


「ん……!」


 甘美にして濃厚な口づけ。とても並の十三歳男子にはできないだろうディープなやつをかましてやった。

 ウィッキーの体から力が抜けていく。

 守護隊の少女達が、小さな声でキャーキャー言っている。


「え? どうしてこのタイミングで……?」


 ルーチェだけは冷静な反応を見せてくれた。


 俺はウィッキーの唇から離れると、フードに覆われた頭を撫でてやる。


「……ロートス」


「黙って俺に従え。いいな?」


「……はいっす」


 ウィッキーはとろんとした恍惚の表情である。


 よし。

 勢いでやったことだが、上手くいったからよしとする。


「どうしてこのタイミングで……?」


 ルーチェは未だに疑問に思っているようだった。

 それはそれで都合がいい。


「じゃあ、頼んだぜ。俺は行く」


 この勢いのまま、俺は一人カード村の中心へと向かった。


 エレノアがここにきているとなれば、放ってはおけない。

 あいつは大切な幼馴染だし、加えて同じ世界から転生してきた転生仲間かもしれないのだ。

 フェザールの言うことが正しければの話だが。

 それを確かめるためにも、直接会って話をしなければならないだろう。


 予想外の展開だが、仕方ない。

 これも運命だ。

 だが俺は運命に翻弄されたりはしない。

 運命の方を、俺が振り回してやるのさ。

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