表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
215/1001

かえりはこわい

『はーい。もしもし?』


 通話開始。

 ウィッキーが今の状況を先生に説明している。


 その間に、シーラが俺の隣にやって来た。


「主様。先程の医療魔法なのですが……」


「ああ。どうかしたか?」


「一体どのような魔法をお使いに? 治癒を阻害する戦闘魔法による負傷は、いかなる医療魔法の効能も受け付けませんのに」


 そんなこと言われてもな。


「よもや、伝説の医療魔法シューペルエイドをお使いになられたのでは?」


 シューペルエイド? 知らない魔法だな。


「俺が使ったのはファーストエイドだよ。それしか使えないし」


「ファーストエイド? 初歩の初歩ではありませんか」


 シーラは燃えるような紅い瞳をこれでもかというほど見開いていた。


「そうだよ」


「そんなまさか。一体どんなからくりを……」


 からくりって言ってもな。普通に使っただけだし。スキルとかも使ってないしな。

 転生者だから、なんか特典があるのかもしれない。それか、俺の体質に関係あるのか。


 俺自身についてわからないことだらけだから、推測もできん。


 そんなこんなでウィッキーと先生の通話が終わったようだ。


「先生はなんて言ってた?」


 ウィッキーは念話灯を懐にしまいながら、


「先輩が言うには、カード村を占拠したのはガウマン侯爵の軍で間違いないらしいっす。あと、他の貴族は来ていないようっすね。だから、戦力はそれほど多くない。やり過ごすように言われたっす」


「やり過ごすったって、どうやって?」


「陽動作戦っすよ」


 ウィッキーはしたり顔である。


「誰かがガウマン侯爵の軍を引きつける。その間に通過するんっす」


 なるほど。


「しかし……だれが陽動を担当する? 下手すりゃ捕まる。最悪、戦いになることだって想定せにゃならん」


「先輩曰く、適任はアイリスらしいっす」


 皆の視線が一斉にアイリスに向く。


「はい」


 アイリスは相変わらずののほほんとした微笑みを浮かべていた。


「わかったぞ。アイリスが『千変』で目立つ姿になって、引きつけるってことか」


 ウィッキーが首肯する。

 それなら戦闘になってもモンスターとの戦いだと処理されるだろう。

 いよいよアイリス万能説が濃厚になってきたな。いまさらか?


「かしこまりましたわ。このあたりに生息するモンスターに化けて、カード村を襲ってみましょう」


 ぽんと両手を合わせるアイリス。物騒なことを穏やかに言うところがこいつらしい。


「アイリス。分かってると思うが」


「はい。人死にはなし、でございましょう?」


「ないすぅ!」


 やはりアイリスはできた従者だ。とてもスライムとは思えないな。実のところ、もしかしたらスライムじゃないのかもしれない。知らんけど。


「作戦は決まったね?」


 ルーチェが実行を促してくれる。


 よし。


「アイリス。適当に相手をしたら切り上げるんだ。ガウマンの軍を撒いたら合流してくれ」


「お任せあれ、ですわ」


 完璧な作戦だ。

 この作戦なら、失敗することなどあり得ないだろう。


 ああそうだ。

 きっとそうに決まってる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ