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これはやばい

「そんなわけあるか」


 あいつが戦争の片棒を担ぐような真似をするとは思えない。

 まだ十歳の女の子なんだぞ。


「ロートス様、よくお聞きください。サラ嬢は、スキル至上主義の社会を嘆いておられました。何故だか分かりますか」


「そりゃ、獣人だからだろ。スキルを持たない亜人は人間扱いされないから」


「違います」


 マクマホンは今までで一番はっきりした口調で否定した。


「サラ嬢がスキル至上主義を嘆くのは、すべてあなたの為です」


「俺のため?」


「ええ。『無職』であるあなたにとって、この社会はこの上なく生きにくいでしょう。愛する主人が、『無職』であるというだけで正当に評価されない。それを憂いていたのです」


 そういうことか。

 なるほどな。真実がどうかはともかくとして、たしかにサラならそんな風に考えていてもおかしくはない。


 けど、なんつーか。


「おせっかいだな」


 俺はマクマホンを突き飛ばすように放す。


「別に俺は生きにくいなんか思ったことはねぇし。『無職』だってことに絶望したりしてねぇ。そもそも社会の評価なんざ求めてないしな」


 人から褒めそやされたり、ちやほやされたり、そんなもんを求めるような浅はかな男じゃねぇんだよ俺は。


「あなたがそうでも、周りはそうは思わない。あなたのことを愛する人は、あなたが不当な扱いを受けることが耐えられないでしょう」


「ああそうかもな。だから、おせっかいなんだよ」


 俺の評価なんぞ、ひとりひとりが勝手にやっていればいいんだよ。


「そういうわけだ。とにかくサラと話をさせてもらおうか」


 とにかく、あのクリスタルから救出しないとな。

 大魔法のカギとやらにさせるわけにもいかねぇし。


「ロートスくん……」


 ルーチェは俺の後ろで手を組んでいる。


「困りましたねぇ。今、サラ嬢は安全なところで眠っておられますから」


 ああ、しらばっくれたなこいつ。

 やっぱり信用できねぇわ。


 ここでぶっ倒しておいた方がいいかもしれん。

 だが。


「敵襲だぁ! やばい!」


 遠くから聞こえてきた男の声に、俺達の意識が引き寄せられる。


「王国の兵隊が来たぞ! 夜襲だ! 冗談抜きでやばいやつだ! みんな起きろぉ! やばいぞ! 迎え撃つ準備をするんだぁ! ああ、やばい!」


 この上なくやばさの伝わってくる声だ。


「さて、のんびり散歩というわけにもいかなくなりましたね」


 マクマホンは踵を返して去っていく。


「ひとまず私はこれで、ロートス様は安全なところにお逃げになるがよろしいでしょう」


「おい、話はまだ終わってねぇ」


「敵が攻めてきているのに話し込んでもいられません。しからば」


 マクマホンは魔法を唱えて浮遊し、どこかへ飛んで行ってしまった。

 くそ。体よく逃げられちまったな。


「ロートスくん。どうするの?」


「サラのところへいこう。戦いのどさくさに紛れて、あのクリスタルから出してやらねぇとな」


 戦争を止めることはできなかった。

 だがそれは仕方ない。

 たかがいち学生にできることなんて知れてる。

 今は、サラの救出が第一だ。

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