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あいつも同じ

 深夜の森を歩く。

 暗い道を進むのは楽じゃない。かなり神経を使う。


「ロートス。プロジェクト・アルバレスの件。最初に一つ聞きたいんだが」


 しばらく雑談を交わした後、フェザールが本題に入る。


「機密事項の一つに、キミがこの世界の住人ではないという記述があった」


 心臓が、どくんと跳ねた。


「それは、真実なのか」


「……ああ」


 ここまで来たら隠す意味もないだろう。


「正確には、俺は別の世界から転生してきたんだ。向こうで死んで、その記憶を持ったままロートス・アルバレスとしてこの世界に生まれた」


「異世界からの転生ね。なんともまぁ……まるでおとぎ話だ」


「ああ、そうだな。まったくもって同感だよ」


 異世界転生なんてありふれた設定だ。確かに夢があるけども、創作物のアイデアとしては陳腐すぎる。

 だけど、それが我が身に起きたのなら話は別だ。

 現に俺は、なかなかにスペクタクルな人生を送っている。


「機関は、俺が転生者ってことを知ってるんだな」


 そこが問題だ。

 今まで誰も、そのことについて触れる奴はいなかった。


「知っているのは上層部のごく一部だろうね。でなければ、最高機密として厳重に秘匿されているわけがない」


「まぁ、そうか……待てよ。じゃあ、俺をこの世界に連れてきたのは、ヘッケラー機関ってことになるのか?」


 たいまつの灯りに照らされたフェザールの横顔が、厳めしく引き締まる。


「それも含め、順に話していこう」


 俺は唾を呑む。


「機関は数百年にわたってスキルと魔法の研究を重ねてきた。その中で、運命の存在が明らかになった。スキルと運命は、切っても切り離せない関係だ。スキルの謎を紐解くには、運命という形のないものの解明が不可欠だった」


 なんとなくわかる。アカネも似たようなことを言っていた。


「なんのことはない。運命とは因果律。生きとし生けるものが持つ当たり前のルール。その根本の法則だったんだ」


「運命は、自身の行動によって決まるってやつか」


 フェザールは頷く。


「そこでマシーネン・ピストーレ五世は考えた。この因果律、根本の法こそが神であり、それを克服することこそ神を超越するのと同義だと」


 馬鹿じゃねーの、あいつ。


「そして手に入れたのさ。運命を操作する『ホイール・オブ・フォーチュン』を」


 ほんと、何がしたいんだよ。

 神を超越したからってなんだってんだ。数百年もかけてやることがそれかよ。


「けれど、それも完全ではなかった。研究を進める中で気が付いたんだ。この世界の住人である以上、完全な意味で神を克服することはできない。だから、こことは違う世界から人を呼ぶことにしたんだな。試行錯誤の末、その思惑は成功し、二人の異世界人を召喚することができた」


 待て。


「ふたり……?」


「ああ。二人だ」


 フェザールの鋭い眼光が、俺を射抜く。


「エルフの里でキミと一緒にいたあの子だ」


 うそだろ。

 エレノアが、転生者だってのか。

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