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ダンジョン決定

「いいこと思い付いた」


 俺はぽんと手を叩く。


「いいこと?」


「ああ。つまりだな、あいつの陰に隠れたらいいんだよ。そうしたら、目立ちにくくなるだろう?」


「イキールって人のですか?」


「そうだ。目立ちたがりのイキールの近くにいれば、相対的に俺の影が薄くなる。木を隠すには森の中ってわけだ」


「なんかよくわかりませんけど、ご主人様の目立たないことへのこだわりだけは伝わってきます」


 サラは呆れ顔になっていた。なぜ俺が呆れられるのか。


「とにかく、ダンジョンはあいつと一緒のところを選ぼう。何かあったら、全部あいつに押し付けられそうだしな」


 そう決まれば話は早い。

 俺はそれとなく、イキールの近くに移動する。


「それじゃー! 試験開始です! タイムリミットは明日の朝まで! それでは皆さん、頑張ってくださーい!」


 アデライト先生の元気な声を合図に、クラス分け試験が始まった。


「ではゆくぞ。僕は強欲の森林に行く。リッター、ついてこい」


「はっ」


 ほほう。一番強力なモンスターがいるダンジョンを迷いなく選ぶあたり、自分の実力に相当の自信があるようだ。

 早々に動き出したイキールは、ダンジョン選びに迷う他の新入生をよそに出立していた。


「よし。俺達も行くぞ」


「おっけーです」


 俺はサラを連れ、イキールの後を追う。


「そういえば、あいつはなんで騎士を一人しか連れていかないんだ? 他にもたくさんいるのに」


「ご主人様、先生の話を聞いてなかったんですか? 試験に連れていける従者は一人までって、さっき言ってたじゃないですか」


「ああ、全然聞いてなかったわ。まぁ別にいいだろ。俺にはサラしかいないんだから」


「ご主人様には、ボクしかいない……」


 サラの頬がリンゴみたいに赤く染まる。


「なんだか、その言い方は恥ずかしいですね。発情しちゃいそうです」


「おいやめろ。俺は健全な主従関係をモットーにしてるんだ。奴隷だからってそういうことを強制したりはしないぞ」


「お風呂ずっと見てるくせに今さら何言ってるんですか……」


 それとこれとは話が別だ。

 論点をすり替えるな。まったく。


「ん? 発情っていうと、やっぱり獣人には発情期があるのか?」


「そうですね。ボク達マルデヒット族は、つがいに相応しい人が現れたら妊娠するまで年中発情期になります」


「なんだそりゃ。つがいに相応しいって例えばどういう?」


「簡単に言うと、その……好きな人ってことですよ」


「なるほど。人間と同じか」


 多少語弊があるかもしれないが、人間もそんなものだろう。


 閑話休題。

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