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俺はこうやって生きる

「いけませんロートスさん。冒険者ギルドは国家的な組織です。とても個人が対抗できるようなものではないのです」


 ふむ。


 確かにそうかもしれない。やられっぱなしが性に合わないというわけじゃないが、はらわたが煮えくりかえっているのも事実。

 やられたらやり返すがこの世界の通念なんだったら、俺がギルドに牙を剥いても問題ないはずだろう。


「強大な組織……権力か……」


 大きな組織力に物を言わせて好き勝手にやる。都合の悪いものを排除しようとする。

 こういうのはどこも一緒だな。どの世界も一緒だ。人間が生きている以上、そういう問題は切り離せない。


 権力の魔性というやつだ。

 権力が悪いわけではない。それに取りつかれる人の愚かさ、そして弱さが悪いんだ。


「ヘッケラー機関を頼るってのはどうです?」


 組織には組織で対抗だ。


 ヘッケラー機関は国王でも手出しできないほどと聞いた。ならば希望はあるだろう。

 今回の件で、最低限の繋がりを作ることができたわけだし。


「たしかに、機関ならばギルドに対抗できるかもしれません。いえ、確実にできるでしょう。ですが、どのような大義名分で協力を仰ぐのです? 彼らには何のメリットもありません。それに、私は機関に背いた裏切り者。手を貸してくれるはずもありません」


「やってみなきゃわかんないですよ、先生」


 最初から無理と決めつけてもしかたない。すこしでも可能性があるならやってみる価値はある。


「ヘッケラー機関の場所を教えてください。先生とウィッキーは行けないでしょうから、俺一人で行くことにします」


「ロートスさん……!」


 先生の表情が強張る。そして、すっと顔を伏せた。


「……そこまでして頂く義理はありません。運命に干渉する体質のことなら気にしないでください。これは私と母が抱える問題です。ロートスさんの体質は関係ありません、むしろ、かえって私達親子があなたの人生にご迷惑をかけることになります」


「別にそんなことごちゃごちゃ考えてませんって」


 確かに、魔法学園に入ってからというもの、俺の人生はぐちゃぐちゃだ。目立ちたくないのに目立っちまうわ、多くの面倒事に巻き込まれるわ。

 でも仕方ないよな。運命を操られているんだから。


 この場合の仕方ないってのは、諦めているわけじゃない。現実を現実として、ありのまま受け入れているだけだ。


 厳しい現実を受け入れ、なお理想を追い求める。

 本来の人間の生き方ってのは、そういうもんだろう。


「先生。俺は自分のやりたいようにやりますよ。だから、俺のやり方についてきてください」


「ロートスさん」


 俺の行動原理は非常にシンプルだ。


「自分を好いてくれる女性をないがしろに出来るほど、人間できちゃいねーんですよ」

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