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サラ、大変身

 翌日。


 俺はサラの服を買うためにリッバンループの街に繰り出していた。

 とあるブティックで新品のローブを試着したサラは、その赤色の目を輝かせていた。


「こんないいもの、初めて着ました。生地がなめらかで、軽くて丈夫。ほんとに買っていただけるんですか?」


「もちろんだ。従者として相応しい服装をしてもらわないと、俺も困るしな」


「あ、ありがとうございますっ!」


 サラが着ているのは、黒を基調としたフード付きのローブ。奴隷契約の首輪を隠すために真紅のストールを首に巻いている。その下にはフリルをあしらった上品なブラウスと、紺色のプリーツスカートだ。オーバーニーソックスとブーツを組み合わせて、旅にも対応できるように考えた。見た目はもちろんのこと、実用性も大事なのだ。


「お連れ様、よくお似合いですね。とても素敵ですよ」


「ああ、そいつはどうも」


 若い女性店員がそんなことを言ってくるが、当たり前だ。俺が選んだんだからな。

 ちなみにサラのぼさぼさの髪はすでに床屋で整えている。首輪さえ隠せば、どこからどう見ても奴隷には見えないはずだ。


 いや、我ながら完璧すぎるね。どこに出しても恥ずかしくない美少女になったわ。


「お会計、十万エーンです」


「高っ! そんなにするのかよ!」


「高級品ですから」


「だからってなー」


 言いつつ、俺は躊躇いなく払う。 


「あの、ご主人様。ボクなんかのためにそんな大金を使うなんて」


 サラが申し訳なさそうに見上げてくるが、知ったことか。


「うるせぇ。お前にはそれがお似合いだ」


 十万エーンを支払い、店を出る。

 試着したそのままの姿で外に出たサラは、早々に深く頭を下げた。


「あのっ。ほんとに嬉しいです! ここまでしていただけるなんて、思ってもみませんでした!」


「そうだろうな。俺もそう思う」


 この世界の奴隷の扱いを見ていると、俺のやっていることは明らかに奇行だろう。でもいいのだ。サラはかわいいから甘やかしたいし、そもそも奴隷の扱い方なんてわからねぇ。普通の女の子として接したらいいじゃないか、という軽い気持ちしかない。


「まぁ、恩を感じてるならこれから返してくれ。俺が極力目立たないように、学園でも働いてもらうからな」


「はいっ! 喜んで!」


 サラは両の拳を握り締め、ぴょんぴょんと飛び跳ねながら答えた。その表情は心から喜んでいるようで、とても眩しい笑顔だった。


 あれだ。


 昨日の今日でここまで明るい表情ができるようになったんなら、俺としても満足だ。計四十万エーンも奮発した甲斐があったってもんよ。


 俺、イケメンすぎる。

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― 新着の感想 ―
目立ちたくない割に、ずけずけと思った事を言うので、 結局目立ってしまう性格な気がする。
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